潜在看護師というのは、看護師資格を持っていながら職場を離れている方のこと。具体的には、結婚・出産などをきっかけに看護師としての仕事を辞めている方々を意味します。全国的に看護師不足が深刻化している今、この潜在看護師を職場復帰させようという動きが広がっているのです。
職場を離れている看護師さんは、日本全国でおよそ55万人いると言われており、この方々が職場に復帰するだけで、人材不足はかなり緩和されるはず。
…しかしながら、ことは簡単ではありません。長く離れていれば、身につけたはずの技術も失われますし、最新の医療機器については何も知らない可能性もあるでしょう。
スムーズに復帰するためには、カンを取り戻し、最新の知識を入手する機会が必要になるのです。
とはいえ、その機会さえ用意すれば、潜在看護師の職場復帰は充分可能。看護師の人数を確保するための手段として、大きな注目を集めています。
地域医療の再生を目的として、潜在看護師の研修を大々的に行っているのが愛媛労災病院です。
再就職したいという思いはあっても「長く現場を離れていた自分に仕事が務まるのだろうか…」という懸念から、具体的な一歩を踏み出せない人は多いもの。
そこで、再就職を目指している元看護師さんに実務研修の機会を用意しているわけです。
研修内容のメインテーマは4点。
まず、最近の看護師業界について知識を得ることになります。ブランク期間中に変化したことを伝え、すぐに現在の看護についていける状況へ持っていくことが必要ですからね。
2つ目は、看護技術を改めて習得し、看護師としてのカンを取り戻すこと。3つ目が患者さんのケアを実際に行って、ケア・仕事のイメージを取り戻す。そして4つ目が、看護提供の方法について具体的な技術を再度確認することです。
全国には潜在看護師向けの研修を行っている機関が少なからずありますが、座学だけでなく実務実習を行っているケースはそれほど多くありません。愛媛労災病院の場合、現役看護師とペアになってケアについていくシャドウ研修という過程があるのが強みです。
研修日時も相談可能で、しかも希望者1名でも開講。再就職の希望さえあれば、年齢的な制限もありません。職場復帰の強い意志さえあれば、誰にでも門戸が開かれているのです。
潜在看護師の復帰を助ける制度が重要なのと同時に、看護師が退職しなくて済むような環境づくりも大切です。
人材不足を深刻化させないためには、長きに渡って働けることが一番ですから。
そのためには、退職のきっかけとなりやすい結婚・出産・育児という3大イベントに着目することが必要。
仕事と家庭が両立できるように、既婚者でも受け入れやすいシフトを整備し、産休を取っても戻ってきやすい職場環境を整備することが望まれるでしょう。もちろん、1つでも多くの病院で託児所を完備することも重要です。
潜在看護師の復職支援を行うと同時に、潜在看護師を増やさないための病院づくりが進むことを願ってやみません。